匂い、香りは
その時の感情や情景を思い起こさせる。
いつか奴隷が
勝手に100歳まで長生きして
もう私の声や顔を忘れてしまっていても
私が覚えさせたこの香りと
似たような香りを鼻に感じた時
ふと、私と過ごした時を思い出す。
あれは夢だったのか
現実だったのか
もうよくわからなくて
でも何だか嬉しくて
何だか悲しい気もする。
何十年も前の記憶の中の私は
もうぼんやりとしたシルエットでしかないのに
無性に会いたい、でも100歳を過ぎて身体は自由に動かない。
目の前にいる看護師さん達は優しいけど、違う。
目を閉じて微かな私の影を必死に追いかける。
暗闇の中で大切な何かを探すように・・・
そんな結末だったら良いな、とか
想像しながら嗅がせてる(笑)
伊織